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2023年 小売業界要対応事項 6選

※本記事は「App Unity」からご提供を受けております。著作権は提供各社に帰属します。

2023年は小売業にとって大きな節目になりそうです。すでに決まっていることをリストアップしただけでもかなりの数になります。その中でも重要な変化、キーワードを6つ抜粋しより詳細に記載します。

なお、1月24日の株式会社セブン&アイ・ホールディングスの発表を受けてセブン&アイHD、百貨店大手のそごう・西武を売却の日付を2月から3月に更新をいたしました。

更新:
2023年05月19日

COLUMN INDEX

2023年の注目イベント

時期
予定されている事項
1月
東急百貨店渋谷・本店閉店、仏高級ブランド起業と組んで再開発へ
セブン&アイHD、総合通販サイト「オムニ7」終了
住友不動産、羽田空港直結の総合施設「羽田エアポートガーデン」全面開業
ユニーバーサルスタジオジャパン複数日券などを変動価格制に
大阪メトロが初めて駅郊外へ出店、カフェ営業
2月
24日でロシアのウクライナ侵攻から1年
江崎グリコ、カゴメ、テーブルマークなど食品メーカーが2月納入分から値上げ
空飛ぶクルマ、大阪城公園で初の有人での実証実験
3月
セブン&アイHD、百貨店大手のそごう・西武を売却 → 詳細①
「人的資本」開示義務化へ 23年3月期決算から大手企業4,000社に有価証券報告書への記載求める → 詳細②
ウクライナ産小麦、ロシアによる侵攻で収穫量が前年比3~5割にとどまる見通し
4月
税制改正
自動車の完全自動運転「レベル4」の運行許可制度を盛り込んだ改正道路交通法、施行開始(1日) → 詳細③
日銀の黒田東彦総裁、任期満了(8日)
相続人のいない土地、国が引き取りを開始
日本生命保険が企業から預かる年金保険の予定利率を年1.25%から0.5%に引き下げ
デジタル給与解禁 スマートフォン決済アプリ口座も入金可能に
日銀が中央銀行デジタル通貨「デジタル円」の実証実験を民間企業を交えて開始
改正省エネ法施行 事業者を対象に非化石エネルギーへの転換目標の提出を義務化
従業員 1,000人以上の事業者、男性育休取得率の開示が義務に
5月
岸田首相の地元である広島で主要7カ国首脳会議(G7)開催
6月
日本郵便、直営窓口でのキャッシュレス決済開始
イオン初のCFC(顧客フルフィルメントセンター)によるネットスーパーが開始予定 → 詳細④
広島市中区の「そごう広島店新館」が閉店予定
7月
中野サンプラザ閉館
第9回FIFA女子ワールドカップ開催(〜8月20日)
虎ノ門ヒルズステーションタワー竣工
8月
FIBAバスケットボールW杯史上初の3カ国共同開催(〜9月10日)
9月
関東大震災から100年
小惑星岩石採取探査機オリシス・レックスが地球に帰還(24日)
ピーコック自由が丘店跡地にイオン系の商業施設が建設され開業予定
ダイエー横浜西口跡地に「イオンモール横浜西口」がオープン予定
大学10兆円ファンドが最初の認定校を公表
10月
第一次オイルショックから50年
消費税の仕入税額控除を明確化するインボイス制度開始 → 詳細⑤
11月
24年米大統領の一般投票まで1年(5日)
大和ハウスが札幌市大規模複合開発街「マールク新さっぽろ」開業
東京渋谷駅のシンボル「ハチ公」モデルとなった秋田犬のハチ、生誕100年
12月
「スター・ウォーズ」新作3シリーズのうち1作目が公開予定
その他
総世帯数がピークに
ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限される「2024年問題」 → 詳細⑤
随時更新予定

その1 セブン&アイHD、百貨店大手のそごう・西武を売却の裏で起きている家電戦争

セブン&アイHDが、そごう・西武をアメリカの投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに売却することが決定しています。

フォートレスはヨドバシカメラと連携しており、仮に西武池袋本店へのヨドバシの出店が決まれば、池袋はビックカメラ、ヤマダ電機、ノジマと家電激戦区になりそうです。

なお、家電販売といえば新しいプレイヤーが増えてきています。ドコモの「kikito」ではお掃除家電のルンバやpopIn Aladdinなどの高額な家電を購入前にレンタルができるサービスで、そのまま使い続けて自分のモノにできるサービスを展開しています。2022年11月には日立グローバルライフソリューションズが家電のサブスクを開始しています。

日立の家電レンタル

日立グローバルライフソリューションズの展開

さらに食材の買い忘れや二重購入を減らして、毎日に食材管理を手軽に楽にできる仕組みとして冷蔵庫カメラ、冷蔵庫コンシェルジュアプリを出すなど、消費者の目線での体験を高めています。

これまでもこうした発想のものはありましたが、消費者が自分の目で見てメモをする必要があるなどの負担があり、長続きしなかったものですが、こうしてドアを開けると自動で撮影してスマートフォンのアプリで確認ができるのであれば、スーパーの売り場にいても、簡単に確認をすることができそうですね。

日立アプリ

さらにパナソニックも2021年10月から家電のサブスクを開始し、2022年10月にコースを追加し、同社の調理家電を購入した消費者も対象にその家電にあう食材キットを送るサービス「foodable」を開始しています。

foodable

foodableのサイトより

そしてシャープは、出勤前にヘルシオホットクックに入れるだけで家に帰れば出来たての晩御飯が食べられる食材キットの定額宅配「ヘルシオデリ」を2022年2月から展開しています。

SHARPヘルシオデリ

シャープの食材キットの定額宅配「ヘルシオデリ

また、家電などの定額制シェアサービス「アリスプライム」を展開する株式会社ピーステックラボは、2022年11月に「b8ta」に出品を始めており、オンラインやオフラインの垣根を超えた動きが活発になっています。

アリススタイル

定額制シェアサービス「アリスプライム

b8ta

b8taのサイトより

一方で、ヤマダホールディングスは、不動産業界のDXを推進する不動産取引プラットフォーム「カナリー(CANARY)」を運営する株式会社BluAgeと資本業務提携したことを発表しました。

家電業界とは直接関係のないBluAgeにヤマダホールディングスグループのDX推進を委託することを選んだのです。とにかく家電を取り巻く環境に今後は小売も巻き込まれていくと考えていますので、しっかりとウォッチしていく必要がありそうです。

資本業務提携

BluAgeとヤマダホールディングスの資本業務提携に関するリリース

その2 人的資本の開示義務化とは

人的資本とは人材、または人材が持つ知識や技能、意欲などを指します。
金融庁が主体となって検討を進めていた人材を企業の資本とみなす「人的資本」の開示義務化の制度の詳細が固まり、有価証券報告書を発行する大手企業4,000社を対象とし、2023年3月期決算以降の有価証券報告書から記載が求められるようになりました。

今後は、米欧同様に従業員を人件費(コスト)としてではなく「付加価値を生み出す資本」と捉え、財務情報だけで測れない企業の本質的な価値を探る動きが広がっていくことになりそうです。具体的な記載項目は、人材育成方針と社内環境整備方針、社員満足度、企業の多様性を示す女性管理職比率、男性育休取得率、男女間賃金格差などがあげられます。

その3 自動車の完全自動運転が小売に与える影響とは

自動車の完全自動運転「レベル4」の運行許可制度を盛り込んだ改正道路交通法が施行開始される予定です。自動運転のレベル4とは特定条件下のおける高度運転自動化を指しています。

作動継続が困難な場合においても、オペレーターなどの介入を前提としないため、限定領域(ODD/運行設計領域)においてはドライバーレスを実現することができるレベルを指しています。

自動運転のレベル別け

国土交通省が開示している「自動運転のレベル分けについて」

ここで自動運転に焦点を当てた理由は、自動運転は基幹物流に深く関係しており物流ネットワークの自動化・省人化対応に直結すると考えているためです。

限定領域(ODD/運行設計領域)には都市高速道路及びそれに接続される又は接続される予定の自動車専用道路(一部区間を除く)が含まれており、三菱地所が京都に日本初の高速道路インターチェンジ直結「次世代基幹物流倉庫」の開発を開始しています。
2026年に竣工を迎える予定で開発が進んでおり注目が集まっています。その頃には無人のトラックが高速道路を走っている時代になっているのかもしれませんね。

三菱地所

三菱地所の完全自動運転トラックなど次世代モビリティ受け入れを視野に入れた中核物流拠点

その4 ネットスーパーは更に戦国時代へ

2022年には平和堂、サミットがそれぞれ一店舗から取り組みをスタートしたネットスーパー。平和堂は10X社のStailerを利用し、サミットはスーパーサンシと連携するという、両社とも既にある仕組みを利用しています。

2023年に大注目なのは、イオンと英ネットスーパー企業のオカド(Ocado)と提携によるCFC(顧客フルフィルメントセンター)の竣工と次世代ネットスーパーがもたらす顧客体験です。

2019年11月に英ネットスーパー企業のオカド(Ocado)傘下のオカド・ソリューションズ(Ocado Solutions)と独占パートナーシップ契約を結び、オカドが持つネットスーパーの最新技術「オカド・スマート・プラットフォーム(OSP)」の供与を受け、2023年に最新設備を導入した配送センターを設置するという内容でした。そこを拠点に「次世代ネットスーパー」をスタートさせ、2030年までにネットスーパー売上高6000億円を達成するという大きな目標を立てています。

一方、イオングループはM&Aなどで合流したグループ企業が独自で展開してきたECなどが複数存在する背景もあり、IDもお買い物ポイントも異なる顧客基盤が複数ある状態がOMOの実現を阻む大きな課題になっていると考えらます。これからの壁を超え、お客さまの目線で見るOMOを実現するために、顧客基盤・商品DBなどのインフラを整える強いリーダーシップが求められることになりそうです。

イオンネクスト

次世代ネットスーパーを担うイオンネクスト株式会社のサイトより

その5 インボイス制度のインパクトは軽減税率以上か

2023年10月には、消費税の仕入税額控除を明確化するインボイス制度が開始されます。このインボイス制度への対応も食品スーパーを始めとする小売・流通業にとって大きな負担になりそうです。

インボイスとは、所定の記載要件を満たした請求書などが適格請求書を指します。
インボイス制度とは、適格請求書保存方式のことをいいます。インボイス制度は売り手側、買い手側双方に適用されます。インボイスの発行または保存によって消費税の仕入額控除を受けることが可能です。インボイス制度は、複数税率にひもづいて必要となる制度です。

例えば食品スーパーは、お客様に商品を売るときに受け取った消費税から仕入れ時に払った消費税を差し引いて納税していましたが、今後はこれを正しく計算するために、仕入先にインボイスを発行して貰う必要が生じます。システム対応も必要となるうえ、このインボイスがないと仕入れ業者へ支払った消費税も再び国へ収めなくてはならない点が最大の問題となっています。
よって食品スーパーなどは仕入先にインボイス対応を求めることになるので、必要以上にの納税をしないためには、課税事業者に絞るほうが楽になりそうです。

一方で、地場野菜などの農家さんは年収1000万円以下の免税事業者が多く、食品スーパーの魅力を維持するためにはとても大切なお取引先となるため、どう対応をしていくかは現時点から整理をしておくほうが良さそうです。

その6 ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限される「2024年問題」

2024年問題とは、働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する問題の総称のことです。

とくに食品流通のドライバーは、手積み手降ろしの重労働を強いられたり、センター到着後の待機時間がムダに長いことで敬遠されがちな業務です。そこに加えて時間外労働時間が制限されるということもあり、収入にも直撃することもあり、ますますドライバー不足が深刻化するのではないかと言われています。
急務となるのが製配販のサプライチェーンの協調体制の構築となります。

これまでは製・配の協調が中心でしたが、これに加えて販・小売業との連携が不可避となっています。サプライチェーンにおける物流は様々な問題が横たわっており、具体的には受発注条件、無駄な荷待ち時間、荷役時間、検品時間などがあります。これらをそれぞれ解決するためには、リードタイムの見直し、先着順から予約制への変更、ばら積み貨物のパレット化やサイズの統一化、三分の一ルールの見直しなどが求められます。

また、卸からメーカーへの発注リミットは午前中が大半で、小売業からの発注があがってくるのが同じ午前中であったり午後一時であったりとばらつきがあり、情報連携にラグが発生してしまっていることも大きな問題となっている。

2023年はこれからの難問を解決し、摩擦がないなめらかなサプライチェーンの構築がしっかりと検討できる重要な一年となりそうだ。

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