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【お客様インタビュー】ジュエリーブランド「VARIÉLLE」 ブランドアイデンティティ構築の裏側 【第2回】
- 更新:
- 2025年11月25日
COLUMN INDEX
「VARIÉLLE(ヴァリエル)」は、クロスフォーが自社の原点を見つめ直し、再び世界へと歩み出すために立ち上げたブランドです。
OEM供給を中心に発展してきた同社にとって、「自社の哲学をどう伝えるか」「どんな世界観でお客様に価値を届けるか」は、これまでにない挑戦でした。
そんな中でクロスフォーは、マイナビD2Cとタッグを組み、ブランドアイデンティティの再定義からネーミング・ロゴ・カラー開発、撮影ディレクションまでを一気通貫で推進。
単なる新ブランドの立ち上げではなく、企業としての姿勢そのものを再構築するプロジェクトが始まりました。
本記事では、その第二章――「VARIÉLLE」のブランディング構築の舞台裏を紹介します。
取材にご協力いただいた方:株式会社クロスフォー 佐藤様/小池様/渡邉様
オンラインストア:VARIÉLLE
仕事とライフどちらも楽しむ女性の多様な瞬間を祝福するジュエリーブランド。
なぜ、クロスフォーにブランディングが必要だったのか
長年「加工技術の会社」として高い評価を得る一方、OEM主体ゆえに社名や哲学がユーザーに届きにくくフィロソフィーなどブランドバックグラウンドなども考慮して購入する新しいユーザーの購入行動に合わなくなっていた、運営する複数ブランドに統一感が欠ける——そんな課題認識がありました。そこで「何を、誰に、どんな価値として届けるのか」を改めて定義するため、ブランディングをプロジェクトの起点に据えました。
深い技術理解から生まれた製品をより輝かせるブランディングの方向性
今回ブランドのコンセプトを検討するにあたって、クロスフォーの技術や製品に対する思いを改めてヒアリングしました。
そこで出てきたのが下記の要素です。
クロスフォーの成り立ちや、ものづくりへのこだわり、そこから生まれる製品の輝きを元に、クロスフォーのジュエリーを求める人物像を改めて洗い出しました。
- 仕事とライフをどちらも楽しみながら、核に本質的な品を持っていたいと思う人
- タイムレスなものを身に付けたいという願望と同時に、自分らしい輝き方を探している人
- 信頼できるジュエリーをつけることによって自分の身体や性格が肯定されることを望む人
これらの人物像をペルソナとおいて、さらなる深掘りを行ないました。
ペルソナ設計と「Day/Night × Public/Private」の世界観づくり
データ調査、ペルソナへのインタビュー/リサーチを通じて、「自立した女性」を中核に、仕事・夜・休日など一人の女性が持つ複数の顔を可視化。
「Day/Night × Public/Private」の4象限で感情やシーンを整理し、あらゆる瞬間に寄り添うブランド像を描きました。リファレンスは国内外のジュエリー/コスメまで広く研究し、「エシカル」「セルフラブ」の価値観も検討。核に据えたのは、“多様な瞬間を祝福するジュエリー”という定義でした。
ここに付随して、ブランドに必要な要素として下記が設定されました。
- 今日という作品の主人公:誰もが注目する主人公というよりも、 今日も自分という時間の作品に生きる凛とした主人公
- ロマンスのある引き算>:侘び寂びのような日本文化的引き算ではなく、色気やロマンスを残した、女性のFACETに共感するような引き算
- ハイブランドの余裕:日本的で今っぽいニュアンスとは別格の 質への自信が存在するからこその余白
- 意思の鏡としての煌めき:日々自分自身を輝かせるという意思を反映するような、落ち着いた信念や哲学としての煌めき
「VARIÉLLE」ネーミング/ロゴ/カラー設計
ネーミング
ネーミング:「varia(多様な)」+「elle(彼女)」を組み合わせた「VARIÉLLE」。変化の中に芯を持つ存在を言語化。
多面性を軸にした方向性、芯のある女性を表した方向性、ペルソナの意識を軸にした方向性の、主に3軸で検討が進みました。今回はVARIÉLLEの核である、多面性を軸にした方向性に主軸を据えつつ、以下の3つの語をベースにした案が議論の中心に上がりました。
- 多面性を表す「Facet」を使った命名
- 光を表す「Lumière」を使った命名
- 多様性を表す「varia」を使った命名
これらの候補に対して、複合的な観点からの議論が行われました。
- 語感が過度に柔らかすぎないか(もしくは硬すぎないか)
- 響きがネガティブな意味を想起しないか
- 他社の商標と被るネーミングではないか
これらの議論を経て最終的に、「VARIÉLLE」というブランド名が誕生しました。
ロゴ

▲検討過程で没になったロゴ案
ロゴ:重厚感と繊細さを併せ持つフォントに、意思を感じさせる大文字と整えた文字間。Éのアクセント記号はクロスフォーカット由来のグラフィックで構成。刹那のきらめきと確かな自立を両立させました。
初期案では、金属チェーンが肌に置かれた時の様をイメージした、曲線的なロゴ案も検討していました。 しかし、リファレンスにしていたハイブランドのロゴは、自信を表現するための重たさや重厚感月よく出ていることを理由に、最終的には芯の強さを表した重たさのあるフォントをベースとしたロゴに決定しました。
この重厚感を意識したロゴを選択したことで、ペルソナが好むハイブランドらしい余裕を表現することに成功しました。
カラー
カラー:モノトーンを基調に、差し色は“秘めた情熱”を思わせるバーガンディと、都市のガラスを思わせるブルーグリーンを設計。
ハイブランドの装飾性を抑えた自信のある様を表現するため、過度なカラーは使用せずベースはモノクロで進める方向性が決定しました。
一方、スポットカラーとして、舞台袖の分厚いカーテンを思わせるディープバーガンディと都市のガラスを通した光を表すブルーグリーンを取り入れました。これらはそれぞれ、「秘めた情熱」「ロマンス」、ペルソナが生きる「都会のガラス」「日常の煌めき」を表現しています。
Q. ロゴやカラー決定で難しかった点をお聞かせください。
最初に担当デザイナーさんからご提案いただいた案がすごく良くて、全体としては比較的スムーズに進んだ印象です。
ただ、最初の段階では「想像と全然違うな」という印象もありましたね。
▲検討過程で没になったロゴ案
ペルソナとして描いていた“芯の強さの中にある女性らしさ”が、ロゴの中では少し“やさしさ”として表れてしまっていたんです。
そこをどう表現していくかという部分では少し時間がかかりました。 社内でもペルソナに近い女性社員と意見交換をしながら、「もう少し意志を感じるデザインにできないか」と案を出し合って。 結果的には、担当デザイナーさんのサポートが非常に大きく、何度かブラッシュアップを重ねる中で、納得感の高い形に落とし込むことができました。
Q. 東京にお越しいただき、ペルソナのイタンビューや生活を体験、競合調査を一緒に行いました。クロスフォー様にもペルソナ理解を深めていただきたいという狙いがあったのですが、いかがでしたか?
ペルソナとして設定していた女性像に実際に近い方にお会いできたことが、とても印象に残っています。
ブランディング設計時の資料上のプロフィールでは「芯が強く、自分をしっかり持った人」という印象を受けていたのですが、実際にお話しするととても気さくで、細やかな気配りができる方でした。
そのギャップが新鮮で、「強さの中にもやさしさや余白がある」という人間らしい魅力を感じました。
この体験によって、ペルソナに対する理解がより立体的になったと思います。
また、都内のジュエリーショップやカフェなどを巡る中で、実際に来店しているお客様層も観察しました。
おしゃれで意識の高い方が多く、服装や姿勢など細かな点まで気を配っている様子が印象的でした。
外見だけでなく内面にも意識を向けている人が多く、VARIÉLLEのペルソナ像と重なる部分が多いと感じました。
さらに、SHIHARAの店舗を訪れた際には、空間全体に宿るブランドの統一感から多くを学びました。 美術館のような洗練された空間で、パッケージの形状や質感まで世界観が一貫している。 そこに「ブランドは商品だけでなく、体験全体で記憶されるもの」という気づきを得ました。
Q. ブランド名・コンセプトが決まった瞬間の気持ちをお聞かせください。
『えらいかっこいいのができた。これで進めるのか。大変だな』というプレッシャーとワクワクが同時に来ました。
Q. ターゲティングを絞った判断についてはどのように感じていますか?
—— 渡邉様
ターゲットを明確に絞っていただいたのは本当によかったと感じています。 初期の段階では、もう少し幅広い層に向けて展開する案もありましたが、 それだと「やる意味があるのか?」と感じていました。VARIÉLLEが目指す方向性をはっきり示してもらったことで、ブランドとしての輪郭が明確になり、 「この方向で行く」と自信を持って進められたと思います。 もちろん、新しい挑戦ではありましたが、方向性を絞ったからこそ、 私たちの“強み”をより鮮明に表現できたのではないかと思います。
—— 佐藤様
私も同じく、ターゲットを狭めて良かったと思っています。 最初は“幅広く”という考えもありましたが、 差別化や売上の観点からも、フォーカスを絞ることが結果的にプラスになりました。 ただ、ここまで明確にペルソナやターゲットを設定して進めたことは社内でも初めてだったので、 「新しい挑戦になるな」という手応えもありました。
—— 小池様
当初は「あらゆる自社製品を全て掲載する」というプロダクトアウトの構想でしたが、マイナビD2Cの林さんと進めていく中で、“なぜエンドユーザーが買うのか”という視点の重要性を実感しました。 単に商品を出すのではなく、“世界観に合った見せ方”や“買う理由”までを構築していく必要がある。 これまでのやり方とはまったく違うアプローチで、 正直プレッシャーもありますが、「ここまでやってダメなら納得できる」と思えるほど挑戦的なプロジェクトです。
まとめ
今回行ったブランディング施策をまとめると以下のようになります。
- BI再定義と世界観設計:ペルソナ定義/4象限フレーム/参考ブランド研究
- ネーミング/ロゴ/カラー:「VARIÉLLE」命名、Éアクセントの意匠、モノトーン+バーガンディ/ブルーグリーン
「技術の会社」から「ブランド企業」へ——。 クロスフォーにおける「VARIÉLLE」は、新しい商品群に留まらず、企業の姿勢そのものを映す存在です。CIの再定義からビジュアル構築、社内浸透、そしてキービジュアルの実装までを連動させることで、“多様な瞬間を祝福するジュエリー”という核が、言葉から体験へと立ち上がりました。
この記事は「株式会社クロスフォーのVARIÉLLEプロジェクトシリーズ全10回」の第2回目です。次回は「商品開発」をテーマに、VARIÉLLEの商品開発の舞台裏を深掘りしていきます。
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