ブランディング
新規ブランド立ち上げ成功ガイド:ゼロからのブランディング戦略と失敗回避策
- 更新:
- 2025年08月27日
COLUMN INDEX
なぜ新規ブランド立ち上げに戦略が必要なのか
新しいブランドを立ち上げる際に戦略が必要不可欠である理由は、一言でいえば「優れたブランド価値を計画的に築き上げるため」です。適切なブランド戦略を実行すれば、企業は認知度や顧客ロイヤルティを高め、市場で競争優位に立つことができます。逆に戦略なしに行き当たりばったりのブランディングを行えば、差別化に失敗し市場に埋没したり、想定外の方向にブランドイメージが定着してしまう恐れがあります。このため、新規ブランド立ち上げでは明確な戦略設計が必要なのです。
特に戦略を持つことにより、次のような大きなメリットが得られます。
- 他社との差別化:価格や機能だけで勝負する泥沼の価格競争から抜け出し、ブランドならではの独自価値で選ばれる存在になれます。ブランドが確立すれば「この分野ならあのブランド」と想起される理由が生まれ、ビジネスが円滑に進みます。
- コスト削減:ブランド戦略が成功して認知度や好感度が高まれば、広告やプロモーションに過度な費用をかけずともファンの支持によって自然と顧客が集まります。また企業の魅力が伝わることで採用面でも有利になり、人材獲得コストの削減にもつながります。
- ビジネス機会の増加:独自のブランド価値が確立すると、周囲からの期待値が上がり協業や新規事業が立ち上げやすくなります。中堅企業にとって資金力や知名度のハンデを補い、新たな提携や市場参入のチャンスを呼び込む武器となります。
以上のように、ブランド戦略は単なるマーケティング施策ではなく長期的な企業価値向上の仕組みです。ブランド戦略を導入することで、一貫性のある活動を通じて「売れる」ではなく「売れ続ける」土壌を築くことができるのです。新規ブランド立ち上げ時には、この戦略的視点を持つか否かが成功と失敗を分けるポイントになるでしょう。
成功するブランディング戦略の5つの柱
それでは、新ブランドを成功に導くための具体的なブランディング戦略の5つの柱を解説していきます。これらは数多くのブランド構築の基本要素やステップに基づいたもので、順を追って実践することでブランドの土台を強固にし、失敗リスクを低減します。各戦略において「なぜそれが重要なのか」「何をすべきか」「どんな効果があるのか」を具体的に述べていきます。
戦略1:顧客ニーズに根ざしたブランドコンセプト設計
第一の柱は、顧客のニーズに根ざしたブランドコンセプトを設計することです。どんなに優れたビジネスアイデアも、誰に届けるものかが定まっていなければ意味がありません。ブランドコンセプト設計では、「誰のためのブランドなのか」を明確に定義し、そのターゲット顧客に提供する価値とブランドの存在意義を言語化します。
ターゲットとする顧客の明確化
新規ブランドではまずターゲット顧客を具体的に描くことが何より重要です。闇雲に「万人受け」を狙うのではなく、核心となる顧客層を定めてその人々のニーズ・課題・嗜好を深く理解しましょう。ターゲットが明確になれば、彼らの心に響くブランドメッセージも伝えやすくなります。
- ペルソナの設定: 代表的な顧客像(年齢層、職業、ライフスタイル、価値観など)をペルソナとして作成します。ペルソナを設定し人物像を具体化することで、社内で顧客イメージの共通認識が生まれ、ブランド戦略を円滑に進める土台となります。また、ペルソナを明確にして設計を進めることで顧客が「私のためのブランドだ」という認識を持ちやすく、愛着を持ってもらいやすくなるというメリットがあります。
ペルソナの例

- 顧客の声の収集: 仮説だけでなく、アンケート調査やヒアリングで顧客候補の生の声を集めます。自社の商品・サービスを「誰が」「なぜ」選ぶのかについて直接聞くことで、ターゲットの動機や潜在的なニーズを掘り下げます。
- 市場リサーチ: 想定顧客層が現在どのブランドを支持しているか、どんな選択基準で商品を選んでいるかを調べます。例えばGoogle検索やSNS上で関連するキーワード・ハッシュタグを追い、ターゲットが興味を持つトレンドやフォローブランドをチェックします。
このようにしてターゲット顧客像を明確化すれば、「誰に向けてどんな価値を提供するか」が揺るぎないものとなります。どんなに優れたブランド戦略も、ターゲットと価値提案が不明確では効果を発揮しません。反対に言えば、ここを明確にすることでブランドの核が定まり、以降の戦略すべての判断軸ができます。
ブランドの”存在意義”を定義する
ターゲットを定めたら、次にブランドの「存在意義」(パーパス)を明確にしましょう。これは「そのブランドが世の中や顧客に対してどんな意味を持つのか」「何のために存在するのか」を示すブランドの使命(ミッション)にあたります。存在意義を定義する際のポイントは以下の通りです。
- ブランド使命(ミッション)の言語化: 自社ブランドが目指す方向性や社会・顧客への貢献を一文で表現してみます。「私たちのブランドは○○のために存在する」という形で、ブランドの根幹となる目的を定義します。これは企業の経営理念やビジョンと結びつく場合もありますが、より顧客側にフォーカスした存在理由を考えます。
- ブランド価値観の設定: 併せて、ブランドが日々の活動で大切にする価値観・信条も定めます(例:「革新と品質を追求する」「顧客体験を最優先にする」など)。使命と価値観はいずれもブランドの意思決定の拠り所となり、今後展開する施策の判断基準となります。
- 一貫したストーリー作り: 存在意義と価値観を軸に、ブランドの背景ストーリーを作り込みます。創業のきっかけや商品開発の物語など、顧客が共感できる物語を用意することで、ブランドに感情移入してもらいやすくなります。このストーリーは後のマーケティングやPRでも話題性を生む重要な要素です。
使命(存在意義)と価値観を明確にし、それを一貫して体現することによって、ブランドの信頼性と説得力が高まります。例えば「私たちのミッションは環境に優しい未来を創ることです」と掲げ、それに基づき商品素材や物流、メッセージ発信まで徹底すれば、顧客はそのブランドを信頼し支持してくれるでしょう。その結果、強いブランドイメージが築かれていきます。
以上が柱1「顧客ニーズに根ざしたブランドコンセプト設計」です。ターゲットと存在意義を突き詰めることで、ブランドの軸が定まりました。次の戦略では、市場におけるそのブランドの立ち位置をさらに具体化していきます。
戦略2:競争市場における立ち位置(ポジショニング)の明確化
第二の柱は、自社ブランドの市場における立ち位置=ポジショニングを明確化することです。どれほど良いコンセプトを掲げても、競合ひしめく市場で埋もれてしまっては意味がありません。ここでは競合分析を徹底し、差別化の軸を定めた上で、自社ブランドの価格・提供価値・顧客体験のバランスを設計します。適切なポジショニング戦略によって、「この市場でこのブランドはここが違う」という鮮明なイメージを顧客に植え付けることが可能になります。
競合分析と差別化軸の設定
まず取り組むべきは競合他社の徹底分析です。自社のターゲット顧客が他にどのような選択肢(競合ブランド・製品)を持っているのかを調べ、それぞれの強み・弱み、提供価値、ブランドイメージを洗い出します。競合分析のポイントは:
- 直接競合と間接競合のリストアップ: Google検索や業界情報から、ターゲット顧客が比較検討し得る競合を網羅します。直接競合とは同じニーズに応える同種の商品・サービス、間接競合とは顧客の可処分所得や注意を奪い合う別カテゴリの商品などです。
- 競合のポジショニング把握: 各競合ブランドが市場でどう位置づけられているかをマッピングします。価格帯、高級感vsカジュアル、機能重視vsデザイン重視、対象顧客層など、複数の軸でプロットすると、自社が狙うべきポジションの隙間が見えてきます。
- 自社の強みの言語化: 競合比較の中で浮かび上がる自社ならではの強みを明確にします。既存顧客や取引先から「選ばれている理由」を調査するのも有効です。社内では当たり前に思っている強みの中に、実は競合と差別化できるポイントが隠れているものです。
競合分析を踏まえたら、次に差別化の軸を一本通します。つまり「我がブランドは○○では競合に負けない」「△△において独自性がある」と胸を張れるポイントを決め、そこに経営資源を集中投下する戦略です。差別化軸の例としては、「最新テクノロジーによる性能」「職人手作りによる高品質」「徹底した低価格」「地域密着の顧客サービス」「環境配慮や社会貢献」など様々考えられます。重要なのはその軸がターゲット顧客にとって価値があり、かつ競合が容易には真似できないことである点です。
差別化戦略を検討する際、SWOT分析や3C分析などフレームワークの活用も有益です。例えば3C分析(顧客Customer・自社Company・競合Competitorの頭文字)は、自社製品のポジションを市場や顧客視点で客観視するのに役立ち、「誰に対して何を打ち出すか」を考える際に有効です。このような分析を通じて「市場の中で自社ブランドは何者か」をクリアに定義しましょう。
価格・価値・体験の最適バランス
ポジショニングを明確化する上で見落とせないのが、価格・提供価値・顧客体験のバランスです。単に価格を競合より下げれば良いわけではなく、ブランドとして適正な価格帯を設定し、その価格に見合った価値と体験を提供することが肝要です。
- 価格戦略の検討: 自社ブランドを高価格プレミアム路線でいくのか、手頃な価格で大量顧客獲得を狙うのかを決めます。どちらにせよ、価格帯はブランドイメージと一貫させる必要があります。例えば高価格に設定するなら品質やサービスで納得感を与え、低価格戦略ならシンプルさやコスパの良さを前面に出すなどです。
- 価値提案の強化: 価格以上の価値を顧客に感じてもらう工夫をします。ブランド戦略で価値を高めれば、顧客は多少価格が高くてもそのブランドを選んでくれるようになります。「あの商品を買うならあのブランド」と思い浮かんでもらえる状態です。ブランド価値が高まれば価格競争に巻き込まれるリスクを減らせるため、収益アップにもつながります。実際、熱心なファンは多少割高でもお気に入りのブランドを支持し続ける傾向があります。
- 顧客体験の設計: 商品そのものだけでなく、購入前後を含めた顧客体験全体で差別化します。店舗やWebサイトの使いやすさ、接客やカスタマーサポートの質、商品の包装や開封時の驚きなど、顧客がブランドと接触するあらゆる場面に気を配ります。たとえばオンライン購入後に手書きのサンクスカードを送付する、コミュニティイベントを開催してブランド愛好者同士の交流を促す等、価格以外の付加価値で勝負できれば強い差別化要因になります。
適切なバランスが取れたポジショニングは、顧客に「このブランドは価格・価値・体験すべてが自分にちょうど良い」と感じさせます。こうなれば顧客は長期的なロイヤルティ(忠誠心)を持ち、競合他社に簡単には乗り換えなくなります。結果としてブランドは持続的な利益を生み、価格に翻弄されない健全な経営基盤を築けるのです。
戦略3:一貫性あるブランド体験の設計
第三の柱は、ブランド体験における一貫性を追求することです。せっかく明確にしたブランドコンセプトやポジショニングも、顧客に伝わる段階でブレてしまっては効果が半減します。ブランドの世界観やメッセージが統一されていれば、顧客は接するたびに同じ印象を受け、記憶に残りやすくなります。一貫性のない状態では、たとえ個々の施策が魅力的でもブランドとして認識・記憶されず、最悪の場合「結局何が言いたいブランドなのか分からない」と思われかねません。ここではブランドの世界観とトーン&マナー(調子や様式)の統一、そして顧客接点ごとの体験設計について解説します。
世界観とトーン&マナーの統一
ブランドの世界観とは、そのブランドが持つ独特の雰囲気や価値観の総体です。これを構成する要素には、ロゴやカラー、フォントなどの視覚デザインだけでなく、使う言葉遣いや語調、広告の見せ方、発信する内容のテーマなどが含まれます。世界観を顧客にしっかり届けるには、これら要素のトーン&マナー(表現の調子と様式)を統一することが不可欠です。
- ビジュアル・アイデンティティの統一: ロゴマーク、色使い、書体、レイアウトスタイル、写真やイラストのテイストなど、視覚面でのガイドラインを作成します。「ブランドカラーは●●色」「画像は明るい自然光で清潔感を」「フォントは和文・欧文とも〇〇系で統一」といったルールです。これらをスタイルガイド(ブランドガイドライン)という文書にまとめておくと、関係者全員が従うべきルールが明確になり、一貫性を保ちやすくなります。スタイルガイドにはロゴやフォントの使用規定だけでなく、ブランドボイスや語調に関するガイドも含め、表現上の指針を体系的に盛り込みます。
カラーパレット例
- ブランドボイスと言葉遣いの統一: ブランドボイスとはそのブランドらしい言葉の「声」です。例えば「カジュアルで親しみやすい」「専門的で権威ある」「遊び心がある」など、ブランド人格の表現ともいえます。このボイスと、具体的な言葉遣い・文体(敬語かフランクか、一人称は「私たち」か、漢字はひらがなにどの程度開くか等)を定義し、すべての文章表現に適用します。WebサイトやSNS、広告コピー、プレスリリースに至るまで、あらゆる場面で一貫した表現を使うことで、顧客との接点ごとにブランドらしさを感じてもらえます。
- 社内周知と教育: 世界観とトーン&マナーを統一するには、現場でブランドに関わる全員(デザイナー、ライター、営業、カスタマーサポート担当者など)がそのガイドラインを理解し遵守する必要があります。社内研修や共有資料を通じてブランドの約束事を周知し、社員一人ひとりがブランドアンバサダーとして一貫した振る舞いをするよう促します。社員自身がブランドのファンとなり、その世界観を体現できれば理想的です。
発信情報の一貫性は、ブランド戦略成功のための最重要ポイントの一つです。各施策が魅力的で売上に繋がっても、表現に一貫性がなければブランドとして記憶されないばかりか、意図と違う認知を与えてしまう懸念すらあります。逆に言えば、どのチャネル・クリエイティブでも「らしさ」がブレなければ、それだけで顧客の心に刷り込まれ、競合には真似できない強固なブランドイメージが築かれます。
顧客接点ごとの体験デザイン
ブランドの世界観が固まったら、それを顧客のあらゆる接点(タッチポイント)で一貫して提供するようデザインします。顧客接点とは、ブランドと顧客が出会い触れ合う全ての場面です。具体的には広告やSNS投稿、ウェブサイト、オンラインストア、店舗の外観・内装、商品パッケージ、接客対応、アフターサポートのメールなど多岐にわたります。これら一つひとつの体験を、ブランドの世界観に沿って最適化しましょう。
- マルチチャネルでの一貫表現: オンライン・オフライン問わず、どのチャネルでもブランドのトーンやビジュアルが統一されていることが重要です。例えばSNS広告でも店舗看板でもメールマガジンでも、一目見て「○○ブランドらしい」と分かるデザイン・言葉遣いになっているかチェックします。すべての接点が調和していれば、顧客の記憶に残りやすくなり、ブランドへの共感や信頼感を高めることができます。
- 顧客体験ジャーニーの設計: 顧客がブランドを認知してから購入・使用・リピートに至るまでの一連の体験(カスタマージャーニー)を描き出し、各段階での最適な演出を考えます。初めてブランドを知る場面では驚きや興味を引く工夫を、購入時には安心感と高揚感を、使用後には満足感と愛着を、といった具合に段階ごとの感情設計を行います。これによりブランドと顧客の関係性を段階的に深め、ファン化へと導きます。
- フィジカルとデジタルの統合: 昨今はオンライン(デジタル)とオフライン(フィジカル)の境目なく顧客が行動するため、両方で一貫した体験を提供することが求められます。例えば店舗での接客と同じトーンでチャットサポートを行う、紙のパンフレットと公式サイトでビジュアルを揃える、イベント参加者に後日SNSでフォローアップするなど、チャネル横断でシームレスなブランド体験を目指します。
ブランド体験の一貫性が徹底された企業では、たとえば店舗の雰囲気、店員の接客スタイル、SNS投稿の内容、公式アプリの使い心地まで全てが統一されています。その結果、顧客は接するたびに同じ価値観に触れることになり、ブランドに対する親しみや信頼が揺るぎないものとなります。一貫した体験設計は地味なようでいて、長期的なブランド資産の構築に大きく寄与する部分です。
戦略4:立ち上げ初期の認知拡大戦略
第四の柱は、ブランド立ち上げ初期における効果的な認知拡大戦略です。どんなに優れたブランドでも、存在を知られなければ顧客獲得は始まりません。特にローンチ直後のフェーズでは短期間でターゲット層にリーチし、ブランドを認知してもらうための集中的な施策が重要です。ただし、単に大量の広告予算を投下するだけではありません。創意工夫によって話題性を生み出し、口コミやメディアで自然拡散していくような仕掛けをすることが肝心です。
ここではティザー施策で好奇心を刺激し話題を作る方法と、SNSや既存チャネルを活用したローコストかつ効果的な拡散について説明します。
ティザー施策と話題性の演出
新ブランドのローンチに際してまず検討したいのが、ティザー(Teaser)施策です。ティザーとは「じらす」という意味のとおり、商品やサービスの全貌をあえてすぐには明かさず一部の情報だけを小出しにして、消費者の好奇心を引きつける手法です。具体的なティザー施策とその効果は次の通りです。
- ティザー広告の展開: キャンペーン開始前や新商品発表前に、「Coming Soon…」のような形で断片的な情報だけを載せた広告や告知を打ちます。商品の名前やシルエットだけ見せて詳細は伏せる、意味深なキャッチコピーだけ発表するといった方法で、「一体何だろう?」とターゲットに疑問や期待を持たせます。ティザー広告はテレビCM、Web動画、ポスター、SNS投稿など様々な媒体で展開でき、キャンペーン前に話題性や拡散力を高める効果があります。
- カウントダウン&先行体験: 発売日やサービス開始日に向けてカウントダウン投稿を行い、日毎に少しずつ情報を解禁していく方法も有効です。また、ローンチ前に一部の招待客やインフルエンサーに試験的に体験してもらい、そのフィードバックや口コミをソフトランディング的に広めるのも手です。「限定◯名に先行提供!」「プレオープンイベント開催」など、限定感とストーリーを演出することでブランドに注目が集まります。
- 話題づくりの工夫: ティザー段階からニュースバリューを意識しましょう。例えば社会的な課題解決に繋がるコンセプトであることを強調したり、有名デザイナーが関わっていることを示唆したり、ユニークなプロジェクト名を用意したりと、「人に話したくなる」要素を忍ばせます。プレスリリースやメディア向け発表資料でも、物語性やインパクトのある表現で報道関係者の興味を引くことが大切です。その結果としてメディア掲載やSNSで自発的な拡散が起これば、大きな効果を生みます。
ティザー施策の狙いは、一言で言えば「ブランドのデビューに花火を打ち上げる」ことです。情報過多な現代では、何もしなければ新ブランドの存在は埋もれてしまいます。あえて情報を絞り込み、謎めいた演出をするティザー広告は、「逆に情報を出さない」ことで注目を集める逆説的なマーケティング手法です。ローンチ初日にいきなり全てを公開するよりも、徐々に熱量を高めていく戦略によって、公開時には既にターゲットの期待感が最高潮になっている状態を作り出せます。
SNSや既存チャネルの活用
ティザー施策と並行して、SNSや既存の自社チャネルをフル活用して認知拡大を図りましょう。中堅企業であれば既に会社としての公式サイトやメールマガジン、取引先ネットワークなど何らかのチャネルを持っているはずです。それらを新ブランド告知のために総動員します。
- SNSでの情報拡散: Twitter(現X)やFacebook、Instagram、LinkedInなど主要SNS上で、新ブランドのアカウントを開設・整備します。ローンチ前からティザー画像や開発舞台裏、コンセプト紹介動画などを投稿し、ハッシュタグキャンペーン等でフォロワーの関与を促します。SNSは投稿の拡散によって想定外の多くの人に届く可能性があるため、頻度高くアップデートすることが大切です。特に若年層ターゲットならTikTokで遊び心のある短尺動画を配信する、ビジネス層ならLinkedInで課題提起型の記事をシェアするなど、媒体特性に合わせた発信を行います。
- 既存顧客・ステークホルダーへの周知: もし既存事業を持つ企業が新ブランドを立ち上げるのであれば、その強みを生かさない手はありません。既存顧客に対してメールマガジンやダイレクトメールで新ブランドのお知らせを送り、クロスセルを狙います。また既存の販売チャネル(店舗やECサイト)で告知ポスターやバナーを掲示したり、取引先企業やパートナーにも協力を仰いで情報拡散してもらったりします。社内報やリリースで社員や関係者にも共有し、周囲から応援される雰囲気を作ることも大切です。
- オウンドメディアとPR: 自社ブログやコラム、プレスリリース配信サービス(例えばPR TIMESなど)を使って、新ブランドに込めた思いや開発ストーリーを記事化しましょう。検索エンジン経由で情報収集する層にリーチできるほか、メディア関係者の目に留まれば取材や記事掲載につながる可能性もあります。「新規ブランド立ち上げのお知らせ」だけでなく、ブランドの背景にある市場課題や独自の取り組みを盛り込んだコンテンツにすることで、読み物としても価値のある情報発信を心がけます。
SNSと既存チャネルの活用は、比較的低コストで始められる認知拡大策です。特にSNSではフォロワーとの直接対話を通じてブランドへの愛着を醸成することができます。投稿へのコメントに反応したり、ユーザー生成コンテンツ(UGC)を紹介したりすることで、一方通行ではない双方向のコミュニケーションが生まれます。そうしたエンゲージメント(関与)が高まれば、顧客自身がブランドの宣伝者となり周囲に薦めてくれるという理想的な循環も期待できます。
以上、ブランド立ち上げ初期には「いかに効果的に火を付け、継続的に燃やしていくか」が勝負です。ティザーと話題づくりで強力な着火剤を用意し、SNSや既存基盤を使って風を送り込むことで、一過性で終わらない持続的な認知拡大を実現しましょう。
戦略5:継続的なブランド強化と見直し
第五の柱は、ブランド立ち上げ後も継続してブランドを強化し、定期的に戦略を見直すことです。ブランド構築は一度完成したら終わり、ではありません。むしろローンチはスタートであり、そこから顧客の反応を見てブランドを育てていく長期プロセスが始まります。環境変化や成長フェーズに応じてブランド戦略を微調整し、資産となったブランド力を最大限に活用することで、競争力を維持・向上させることができます。
ローンチ後の振り返りと改善
新ブランドをローンチした後、定期的に振り返りを行う習慣をつけましょう。ブランド戦略に沿った施策がきちんと打てているか、目標に対して進捗はどうかをチェックします。ブランディングの成果は売上のようにすぐ数値で測れるものではないため、つい効果検証を怠りがちです。しかし、だからこそ計画的に振り返ることが効果的といえます。
- KPIと調査による評価: ブランドの健康状態を測る指標(KPI)を設定し、定期モニタリングします。例としてはブランド認知度調査、顧客ロイヤルティ指標(リピート率やNPS=ネットプロモータースコア)、ブランドに対する好意度や連想イメージのアンケート結果、SNSでの言及数・感情分析などがあります。定量データに加え、営業現場やカスタマーサポートから上がってくる顧客の生の声(定性情報)も重要なヒントです。「最初に抱かれたブランドイメージとズレていないか」「期待外れだった点はないか」などを探ります。
- 戦略仮説の検証: 振り返りでは、当初立てた戦略上の仮説が合っていたか検証します。ターゲット設定は適切だったか、メッセージは響いたか、差別化ポイントは有効だったか等を分析します。もし計画通りに効果が出ていない部分があれば、その原因を掘り下げましょう。市場環境の変化や競合動向によって戦略の微修正が必要になる場合もあります。
- 定期見直しの体制化: こうした振り返りを半期に一度など定期スケジュールに組み込み、ブランド戦略会議を開催することをお勧めします。場合によっては外部のブランディング専門家にファシリテーションを依頼し、客観的な視点を取り入れるのも有効です。社内だけで閉じていると気付かない盲点も、第三者の意見や業界ベストプラクティスを参考にすることで見えてくることがあります。
振り返りによって「ブランドの現在地」を正しく把握し、必要に応じて戦略を軌道修正していく姿勢が、長期的なブランド成長には欠かせません。定期的に戦略を見直していくことで、常に自社の立ち位置を考え続けることができます。環境の変化やステークホルダーの声にも耳を傾けつつ、ブランド戦略をアップデートし続けましょう。
ブランド資産の蓄積と活用
最後に、築き上げたブランド資産を継続的に蓄積し、有効活用する視点を持ちましょう。「ブランド資産」とは、ブランドが持つ無形の価値すべてを指します。顧客の認知・信頼・愛着、ブランドに関連するコンテンツ(ロゴ・キャッチフレーズ・映像等)、ブランドコミュニティ、人材や企業文化も含まれる広い概念です。これら資産は年月とともに蓄えられ、競合には容易に真似できない強力な経営リソースとなります。
- ブランド価値の維持・向上: 市場や消費者の価値観は日々変化していきますが、ブランドはその変化に適応しつつも自らの核となる価値観を維持する必要があります。たとえば時代の要請に合わせてメッセージをアップデートしたり、サステナビリティ(持続可能性)への取り組みを組み入れたりすることで、ブランドの時代適応力を高めます。このとき、ブランドの根幹(ミッションや世界観)は守りつつ、新しい要素を加えて進化させることが重要です。そうすることでブランド価値を高め続けることができます。
- ファンコミュニティの醸成: ブランド資産の一つである熱心なファン層は、他に代え難い貴重な存在です。ローンチ後、顧客の中からブランドを愛好し応援してくれる人々を見つけ出し、大切に育てましょう。SNS上でリツイートしてくれるフォロワーや、愛用体験をブログに書いてくれるユーザー、イベントに毎回来てくれるお客様などです。彼らとのコミュニケーションを密にし、時には限定グッズや情報を提供するなど特別な体験を与えることで、ブランドと顧客の結びつきはより強固になります。ファンがファンを呼ぶ好循環が生まれれば、マーケティングコストをかけずともブランド拡大が期待できます。
- ブランドの拡張と展開: 蓄積されたブランド資産は、新たな事業展開にも活かせます。たとえば確立したブランド名やロゴのもとで新商品ラインを立ち上げる(ブランドエクステンション)ことで、新規事業でも初期認知を得やすくなります。ただし本筋ブランドのイメージとかけ離れた展開をすると既存資産を毀損する恐れがあるため、ブランドの一貫性を保ちながら拡張することが大切です。また他社とのコラボレーションの際にも、自社ブランドの持つ価値を交渉材料にできます。共創マーケティングやOEM供給などで「〇〇ブランド監修」と銘打てば、それ自体が信頼の証となり得ます。
ブランド資産を活用する際は、常にブランドの格(品位)を保つことにも留意しましょう。安易なディスカウント販促や過剰なライセンス展開は、一時的な売上には繋がってもブランドの高級感や独自性を損ないかねません。むしろ、長年かけて育てたブランドエクイティ(資産価値)は、価格競争からの脱却や優秀な人材の確保にも寄与する重要な無形資産です。企業経営においてブランドを単なる飾りではなく「資産」と捉え、慎重かつ大胆に運用していく視点が求められます。
まとめ
新規ブランド立ち上げを成功させるためには、以上述べた5つの戦略の柱を軸に据え、計画的かつ柔軟にブランディングを進めていくことが重要です。
改めてポイントを振り返ると、「誰に・何を提供し・なぜ存在するブランドか」を明確化し、競合に対する優位性を打ち出し、一貫したブランド体験を提供し、効果的に世に広め、ローンチ後も磨き続ける——この一連の流れが新規ブランド成功の王道パターンです。その道程で起こり得る失敗(例えばターゲットの見誤り、ブランドメッセージのブレ、認知獲得の不発など)も、ここで挙げた戦略を意識していれば事前に回避または最小化できます。
ブランド構築は短距離走ではなく長距離走です。腰を据えてブランドという無形の資産を積み上げていけば、いずれ自社の商品やサービスに熱烈なファンやリピーターが付き、多少価格が高くても選ばれ続ける強い存在になります。その結果、価格競争に振り回されない安定した収益基盤や、自社の理念に共感する優秀な人材の確保といった好循環も生まれていくでしょう。
最後に強調したいのは、ブランド戦略とは企業の未来への投資であるということです。ゼロからブランドを立ち上げる皆様は、そのブランドの”親”として計画を練り、愛情を持って育て、社会に羽ばたかせる使命があります。本記事のガイドが新たなブランドが多くの顧客に愛され、末長く成長していく一助となれば幸いです。
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